脱毛豆知識~脱毛する意味~<医師監修>
- 2022.6.3
目次
イントロダクション
なぜ人類は、脱毛するようになったのかを生命の進化や人類の発達の観点、さらには、文化的な側面から考察した内容です。
体毛の発生
なぜ体毛があるのかをお話致します。
太古の生命は海で発生しました。単細胞の生命からはじまり、徐々に多細胞生物になり、やがて魚類が誕生しました。魚類の体表は、ウロコに覆われていました。その後、生命は陸上に進出しました。両生類や、爬虫類も誕生し、これらにもウロコがありましたが、徐々にウロコは退化して、羽毛に置き換わるようになりました。
恐竜もウロコで覆われていた説から実は、羽毛に覆われていた説が有力になりつつあります。この羽毛が、進化したのが、体毛です。
ウロコが羽毛に進化したのは、羽毛には紫外線被曝の防止効果があるからという説が有力です。カルシウムやハイドロキシアパタイトを主成分とするウロコにも紫外線を反射する機能はありますが、羽毛や体毛は皮膚の外側で紫外線を反射や吸収できるのでより効果的なのです。
元々、生命の陸上への進出は、約4億年前に紫外線を軽減するオゾン層が増大したことが原因の一つと言われています。陸上に進出したものの、長時間の陸上生活をするにあたり、それなりの防御システムが必要であったと考えられます。
また羽毛は保温効果があります。比熱が大きい水に比べ、陸上では、気温の日内変動も大きく年較差も大いにあります。環境に適応するために羽毛が必要になったと考えられます。
その後、鳥類は、軽い羽毛を利用して、空を飛べるようになりました。陸上生物では、羽毛が外面保護機能を持つようになり、それが体毛になったと考えられます。羽毛は軽いですが、毛皮のほうが外力からの保護効果が高いのです。こうして鳥類は、羽毛、哺乳類は、体毛で覆われることになりました。
体毛の退化
四つ足歩行から二足歩行になった人類は、背骨が直立し、脳の発達が受け取れる構造となりました。脳は、発達して、道具を使う能力ができて、食べ物を切ったり、焼いたり、煮たりすることができ、咬む力が弱くなってしまいました。さらに爪も硬い必要はなくなり、やわらかくなってしまいました。そして、二足歩行になると、四足歩行よりも走るのが遅くなってしまいました。
最初に人類が発生したのはアフリカです。生活する中で、他の動物を捕獲して、食べなければなりません。そこで、ライオンなどの肉食動物がライバルになりました。彼らは、言わずもがな強力な殺傷能力があります。暑い昼間に草原に出て、一瞬で加速して獲物を捕らえることができます。人間は、速く走ることもできないので、逆に長距離走る能力を獲得しました。長距離走るためには、体温調整が必要です。そのため、エクリン腺を発達させました。汗をかくことで、体表面の温度を下げることができるからです。エクリン腺が発達する代わりに体毛が退化することとなりました。
その後、衣服を使用することとなり、ますます体毛が不必要になり、退化することとなりました。ただし、温度調整以外に必要な体毛に関しては、残存することになりました。それが、頭髪や睫毛、眉毛、鼻毛、腋毛、陰毛です。
残った体毛の意味
頭髪は、頭の保護の意味があります。眉毛は、汗が目に入らないようにするための体毛です。睫毛や鼻毛は異物が入らないようにするためにあります。
腋毛や陰毛はなぜあるのでしょうか?どちらも、アポクリン腺がある場所です。
アポクリン腺は、体温調整の効果はありません。フェロモン効果があると考えられております。アポクリン腺は、皮膚表面に直接開口しておりません。毛根に開口しております。体毛が退化する中で、残ったのが、脇と陰部であったということです。両方とも常に体表にあるわけではなく、腕を挙げないと開かない部分であり、衣服に覆われている部分であることが残った理由のひとつかもしれません。毛にフェロモンのにおいを蓄積することができるからです。
ひげに関しては、どうでしょう?コミュニケーションをとるための表情を見せるために顔の体毛が退化したと考えられております。その後、言語が発達したことから言語でコミュニケーションをとることが主になり、顔の体毛の退化が止まってしまいました。退化途中で、残ってしまったのがひげであると考えられております。
体毛の機能のまとめ
ここで、体毛の機能をまとめます。
・紫外線の被曝からの保護
・外力からの保護
・保温機能
・汗や異物が体内に入らないようにするため
・フェロモン効果
・退化途中の遺物(ひげ)
脱毛するのは、平和な世の中であるからこその必然?
体毛は主に男性ホルモンによって刺激され、発毛します。第二次世界大戦後、紛争はあるものの、おおよそ世界的な平和が70年以上継続しています。戦争には、少なくとも男性的強さや筋肉が賛美される傾向があると考えます。しかし、平和な世の中で、そういった象徴のようなものはあまり需要がなくなってくるのです。男性ホルモン(アンドロゲン)による象徴のようなものが需要減から不要になり、さらに「体毛を脱毛することが普通」のような雰囲気になってきたのではないでしょうか。(この傾向は、女性の方が、アンドロゲンの象徴を不要とすることが多いので、皆様がご存知のように男性より女性の方が強くあります。)
脱毛が世の中に広まっている理由は、平和な世の中であるからこその必然なのかもしれません。
文責:まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤成貴