ビタミンCは摂り過ぎても問題ない?〈医師監修〉
- 2022.8.6
目次
ビタミンCの歴史
大航海時代(16世紀~18世紀)に船員達が大量に壊血病で亡くなることが頻発しました。(壊血病とはビタミンC不足で生じる病気です。初期症状は、関節痛、全身倦怠感、皮膚の乾燥、うつ状態です。その後、粘膜や消化管や皮膚に内出血を来すことになります。)当時は、ビタミンCの存在は知られていないどころか、人間が生きるのに必須の栄養素があることすら知られていなかったので、何がなんだか分からない、ものすごい恐怖の病気であったと思います。船員の半数以上が、壊血病で亡くなることもあったそうです。
ちなみにビタミンCは、人では、体内で合成することができません。したがって、食物から摂取するしかないのです。(多くの動物は体内で合成することができます。)
1753年ジェームズ・リンドという人が、柑橘類を食べていた人が壊血病になっていないことを発見し、A Treatise of the Scurvyの中で紹介しています。その中で、柑橘類の摂取を薦めています。
その後、キャプテン・クックの航海が壊血病での死者を出さずに成功しました。キャプテン・クックは、船員にザワークラウト(※1)や、果物の摂取を薦めていたようです。し当時、新鮮な果物は手に入れることが難しかったので、イギリス海軍では、麦汁や濃縮オレンジジュース(※2)を飲むことを推奨していたそうです。一方、クックが帰還後に麦汁がいいのではないかと言ったことで、その後もしばらく壊血病がしっかり予防できない期間がありました。
その後、1795年にギルバート・ブレーンが、壊血病の予防策として海軍全体でレモンジュースの提供を実施させたことで、壊血病には柑橘類が良いという考え方が定着することになりました。ただしこの時点でもビタミンCの存在は知られていませんでした。
その後、1919年にジャック・ドラモンドが、オレンジ果汁の中にも壊血病を予防する成分があることを発見し、それをビタミンCと名付けました。
その後、ビタミンCの単離に成功し、合成までできるようになって今日に至っております。
※1ザワークラウト:ドイツのキャベツの漬物。酸っぱいキャベツ。酸味は発酵により生じる乳酸によるもの。おそらくキャプテン・クックが薦めた食品の中では、ザワークラウトのビタミンCが壊血病に効果があったと思われる。
※2濃縮オレンジジュースは加熱しているので、ビタミンCは変性しており、効果を発揮できていないと考えられる。
ビタミンCの効果・効能
はじめ壊血病で見つかったビタミンCですが、現在では他の作用もあることが分かってきました。
いくつもあるので順番に説明します。
抗がん作用
果物や野菜を多く摂取する人はがんのリスクが低下することが示されています。これらの食物のビタミンC含有量が高いことが原因と考えられています。(J Nutr 2007;137:2171-84.)ビタミンCは、発がん物質を生成しにくくします。(Am J Clin Nutr 1999;69:1086-107.)抗酸化機能によってがんの原因を除去する効果もあります。ビタミンC摂取が多いほど、肺癌、大腸癌、胃癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌になる方が少なくなるというデータもあります。( Nutr Clin Care 2002;5:66-74.)
免疫増強作用
ビタミンCが白血球の一種であるリンパ球や、インターフェロンなどを活性化する作用があり、免疫力を高めます。その他、白血球がウイルスや細菌を攻撃する時に発生する活性酸素をビタミンCの抗酸化作用で抑制します。
風邪にも効果があると以前から言われているが、臨床試験の結果としては、ビタミンCを常時補充した試験で風邪の罹患期間と重症度に一定の効果があるという結果もあります。
美白作用
ビタミンCにはチロシナーゼという酵素の働きを阻害します。したがって、メラニンの沈着を防ぎます。シミの治療や肝斑などに効果的です。また日焼けをしてなるべく黒くならないように内服する場合もあります。
ニキビ、ニキビ跡の治療
ビタミンCの抗酸化作用でニキビの予防ができます。活性酸素が皮脂と反応して過酸化脂質となることがニキビの原因になります。ビタミンCの抗酸化作用で活性酸素の生成を抑によりニキビの予防ができるのです。またビタミンCはお肌のターンオーバーを調整します。毛穴に古い角質がたまり、毛穴を塞いでニキビができてしまうパターンには、ビタミンCは有効です。
骨を強くする作用
ビタミンCには酸化ストレスを軽減することによる骨量減少作用があります。その他、破骨細胞と骨芽細胞のバランスを整え、コラーゲンの合成、消化管からのカルシウムの吸収を促進し、骨を強くします。
自律神経の調整、ストレス抑制効果
ビタミンCには自律神経を調節する作用があります。ストレスを抑制効果もありますがストレスにさらされるとビタミンCは消費されます。
ビタミンCが不足すると、疲れやすくなり、集中力がなくなったり、イライラしたりします。
アレルギー抑制作用
ビタミンCにはヒスタミン(*)の分子構造を破壊することにより血中ヒスタミン濃度を減少させる効果があります。鼻炎や花粉症などに代表されるアレルギー症状を軽減する作用があります。(*)ヒスタミンは、アレルギーで蕁麻疹のかゆみやアレルギー性鼻炎のくしゃみなどを起こす化学物質です。
薄毛治療
ビタミンCにより17型コラーゲンが増え、毛包幹細胞が増殖し、薄毛にも効果があると言われています。
抗動脈硬化作用
酸化LDLが動脈硬化の原因になるので、ビタミンCの抗酸化作用で動脈硬化予防の効果が期待できます。
ビタミンCの摂取方法
通常、食事から摂取します。ビタミンCは水溶性ビタミンで過剰摂取しても尿から排泄されるので過剰摂取はあまり気にしなくても大丈夫です。ビタミンCを体内に入れる方法として、内服の他、注射や点滴という方法もあります。注射や点滴は、血中濃度をいっきに上げられるところが利点です。ただし1点だけ注意することがあります。日本人の1000人に1~5人程度の方がG6PD欠損症という点です。ビタミンCが血管内に入ると、過酸化水素を生成します。G6PDが欠損していると、赤血球の膜が破れ、溶血します。溶血すると、めまいやふらつきなどの貧血症状が出る場合があります。
実は、現在、日本人のビタミンC平均摂取量は推奨値の100㎎/日に到達していません。(令和元国民健康・栄養調査によると、日本人のビタミンCの平均摂取量は93.5㎎です。)日常生活を振り返ってみて、ビタミンCが少なさそうな人は、野菜や果物を多めに摂取する、サプリメントを飲むなど何らかの対応をするとよいかもしれません。
ビタミンCは熱に弱いので加熱してしまうと減ってしまいます。(3分以上茹でると半減します。)ただし、芋類は、でんぷんがビタミンCを保護するため大方残ります。
高濃度ビタミンC点滴について
ビタミンCを大量に経口摂取しても、血中濃度はある一定以上から上がりません。
点滴でビタミンCを大量投与すると、経口摂取の比ではない量が血管内に入ります。ビタミンC血中濃度を高めて、ビタミンCを体中に直接行き渡らせ、経口摂取ではかなわない作用を期待することができるのです。ただし、25g以上の高濃度ビタミンCを点滴する場合は、G6PDの検査をしなければいけません。
以下の方には最適です。
・やる気が出ない
・疲れやすい。
・食欲がない。
・お肌のツヤやハリを出したい。
・シミを治したい。
・免疫力をつけたい。
・アンチエイジングをしたい。
・がん予防がしたい。
・アトピーやアレルギー体質を治したい。
・動脈硬化を予防したい。
・肩こりを治したい。
・二日酔いを治したい。
・冷え性を治したい。
…など
高濃度ビタミンC点滴の副作用
重要な副作用はないと報告されています。比較的起こりうる副作用として以下のようなものがあります。
・点滴をするときの痛み(血管痛)、内出血など
・口渇
・まれに低血糖症状
高濃度ビタミンC点滴ができない方
・ビタミンCに過敏症の方(アレルギーの方)
・G6PD欠損症の方(事前にG6PD欠損症の検査をします。)
・透析中の方
・心不全や不整脈などの重篤な心疾患がある方。
まとめ
ビタミンCを体に入れて、悪いことはほぼないと考えます。
美容以外にもアンチエイジング、がん予防やがん治療などにも有用です。G6PD欠損症でなければ、定期的に高濃度ビタミンC点滴をしてもいいですね。
「ビタミンCは摂り過ぎても問題ない?」の答えは、G6PD欠損症でなければ、「ほぼ問題ないです。」「ほぼ」と書いたのは、どんな食品でも薬でもサプリメントでも下痢、嘔吐、食欲不振、アレルギーなどの副作用が出る場合があるからです。関連性は不明な場合が多いと思いますので、気にする必要はないと思います。
元々、壊血病から発見されたビタミンCですが、こんなにたくさんの効果があるなんて、大航海時代の当時からしたらびっくりですね。
文責:まゆりなclinic名古屋栄 院長 加藤成貴